ドビュッシー:小品

 パリ音楽院の初見の試験のために書かれた作品です。
 

 フランスでは初見の能力が重視され、現在でも同様の試験が行われています。5分ほど初めて見る楽譜と控室に閉じ込められて、その後しかめ面の教授先生方の面前で演奏します。
 今日作曲科はコンピュータを利用した音楽を創る方向にあるため、初見の試験曲は作曲"スタイル"を学ぶエクリチュール科の先生が用意します。


 大抵は間違えさせる罠が仕込まれますが、この曲は付点のリズムが続いて、どこか異国趣味で、ドビュッシーのセンスでさらっと書き上げてしまった雰囲気。

 

 自筆譜をパリ音楽院図書館ウェブサイトで閲覧できますが、メモ書きが多く、試験曲という注文に適応させた跡とも見受けられます。サン=サーンスとはまた違う、ちょっと神経質で美しい筆跡です。

 

 一瞬で終わってしまう試験曲をドビュッシーが直々にとは、なんて贅沢なんだ。

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