サン=サーンス:クラリネット・ソナタ op.167
オール・サン=サーンスプログラム、唯一クラリネットとピアノのために書かれた作品です。サン=サーンスが最晩年に管楽器のために演奏しやすい曲を、と作曲したのが、オーボエ・ソナタ、ファゴット・ソナタ、そして今回演奏するクラリネット・ソナタです。
全4楽章、テンポ設定が緩-急-緩-急と並べられていて、バロック時代の伝統的な舞曲組曲を想起させます。
第1楽章 アレグレット 8分の12拍子
シンプルなモチーフが語るように置かれていき、小説の幕開けのような印象を持ちます。心地良く流れていきますが、よく聴くと随所にハーモニーのこだわりを含んでいて、そこがサン=サーンスの美学と言えるのかもしれません。
第2楽章 アレグロ・モデラート 2拍子
ころころ笑う、フランス娘のような2楽章。ふと思い悩んでみたり、気分の移り変わりが清々しく聞こえるのは私だけ?基本とするのはガヴォットか、リゴドンか、軽やかな舞曲です。
第3楽章 レント 2分の3拍子
教会でのひと場面、祈りの音楽です。クラリネットの音域の違いによる音色の性格差を使って、前半は鐘の音、後半はオルガンの音を奏でます。教会オルガニストを務めたサン=サーンスの真骨頂。
第4楽章 モルト・アレグロ 4拍子
細かい音符をひとしきり、最後には1楽章が戻ってきます。アップテンポの中にこれまでの要素を沢山含んでいるのは、人生を振り返るサン=サーンス自身の走馬灯の記憶か。疾風と灯火のフィナーレ。
フランス国立図書館のウェブサイトで自筆譜の閲覧ができます。出版譜はミスプリントかなとも思える箇所があるのですが、意図的なものと分かると感服の溜息が出ます。どこかは秘密、演奏で分かっていただけたのなら至福の時。
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