フィンジ:歌曲集『花束を捧げよう』

 3作品目には歌曲を選びました。全5曲、5つのバガテルと対にしてみました。バガテルにも影はありますが、歌曲の方がより深い人生観が感じられます。


 詩はシェイクスピアの劇から取っているものです。訳はちょっと調べれば完璧なものが直ぐに出てくるので、ここでは概要にとどめておきます。


I.来たれ、来たれ、死よ Come away, come away, death

 『十二夜』の第2幕 第4場、節目に挿入されている小歌。公爵に仕える小姓シザーリオ、実はヴァイオラという名の女性で公爵にかなわぬ恋をしています。侯爵が道化師にちょっと唄うようにと頼むのですが、事情を知っている道化師は残酷な恋の詩を選びます。

 「来たれ、死よ。私は冷酷な女に殺された。誰にも送られず、見つからない場所に、私を横たえよ。」


II.シルヴィアって誰? Who is Silvia?

 『ヴェローナの二紳士』第4幕 第2場より。恋する男プローテュースが、そのお相手で大公の娘シルヴィアの素晴らしさを歌う。プローテュースは永遠の愛を誓った恋人と友を裏切ってシルヴィアに熱を上げています。ここでのフィンジの音楽は痛いほどに優しく懐柔。

 歌曲集のタイトル"let us garlands bring"、花束は、シルヴィアへ。

 「シルヴィアって誰?どんな人?彼女は清く美しく、聡明さ!それだけじゃない、美しさが目に宿り離れないんだ。さぁ彼女に花束を捧げよう!」


III.もはや灼熱の太陽も恐れるな Fear no more the heat o’ the sun

 『シンベリン』第4幕 第2場より。腹違いの兄弟が決闘し弟が亡くなるのですが、その葬送歌。ミサのように粛々と歩みます。

 「もう灼熱の太陽を、冬の嵐を、恐れるな。権力者のしかめ面を、暴君の攻撃を、恐れるな。着るものを、食べるものを、心配するな。喜びも悲しみも終えたのだ。そして塵に還るのだ。」


IV.おいオレの彼女 O Mistress Mine

 再び『十二夜』、第2幕 第3場。夜中に道化師が子爵たちと酔っぱらっています。

 「おいオレの彼女、どこにいるんだ?どこにも行くんじゃないよ。恋ってなんだ?青春は長くは続かないよ。」


V.それは恋する若者と彼女 It was a lover and his lass

 『お気に召すまま』第5幕 第3場より。終りに近い場面で3組のカップルが結婚しようとしています。めでたい席で小姓が唄います。

 「それは恋する若者とその彼女、ヘイホー!と仲良く一緒にいるよ。指輪の季節、鳥はディンディンさえずるよ。恋人たちは春がお好き。」


プログラムノート続き

公演詳細ページ

Madoka TSURUYAMA clarinettist

クラリネット奏者 鶴山まどか

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